茨城県弁護士会

pickupピックアップ

新型コロナウイルス感染症や自然災害の影響によりローンが返済できなくなった方へ

1. 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(以下,「ガイドライン」といいます。)について

 新型コロナウイルス感染症や自然災害(※)の影響によって、住宅ローンや事業性ローン等の債務の返済が困難になった方を対象として、一定の要件を満たす場合に、ローンの免除・減額を申し出ることができる制度です。

※ 対象となる自然災害はこちらをご覧ください

2. ガイドラインのメリットについて

  1. 対象債務の減免が受けられる。
  2. 差し押さえ禁止財産以外の財産の一部を通常より多く残せる。
  3. 債務整理をしたとしても,ブラックリストに載らない。
  4. 弁護士、不動産鑑定士など専門家の支援が無償で受けられる。

3. ご利用方法とお手続きの流れについて

  1. 金融機関等への申し込み
    最も多額のローンを組んでいる金融機関等へ、ガイドラインの手続きを希望することを申し出てください。その際の受付窓口は、当該金融機関へ確認してください。

  2. 専門家による手続支援の依頼
    1の金融機関からガイドラインの手続きを利用することについて同意が得られたら同意書が発行されます。この発行された同意書と、委嘱依頼書を作成し、茨城県弁護士会宛にご郵送ください。
    委嘱依頼書はこちらからダウンロードしてください。

  3. 債務整理の開始
    金融機関等に債務整理を申出て、申出書のほか財産目録などの必要書類を提出します。書類の作成に当たっては、専門家の支援を受けることができます。債務整理の申出後は、債務の返済や督促は一時停止となります。
    必要書類の準備ができなければ債務整理の申し出ができず,返済や督促を停止させることができませんので,必要書類は事前にまとめておいてください。

  4. 調停条項案の作成
    専門家の支援を受けながら、金融機関等との協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ調停条項案を作成します。

  5. 調停条項案の提出
    専門家を経由して、金融機関等へ調停条項案を提出します。この調停条項案に対して金融機関等から同意又は不同意の連絡があります。

  6. 特定調停の申立て
    全ての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所に特定調停を申し立て、調停条項案を裁判所の関与の下で確定させ、手続きは終了です。
    詳しい手続きの流れは、こちらを参考にしてください。

 

  1. 手続は自分一人でやらないといけないのですか?
     登録支援専門家弁護士の支援を受けながら手続を進めていきます。登録支援専門家弁護士の支援については費用がかかりません。

  2. 金融機関に申し出たら,同意してもらえなかったのですが,どうしたらよいですか?
     ガイドラインの利用の申し出を受けた金融機関は,債務者が本ガイドラインを利用できないことが明らかな場合を除いて,同意しなければならないことになっています。各業界団体の苦情・相談受付窓口(http://www.dgl.or.jp/guideline/pdf/helpdesk.pdf)か,弁護士にご相談ください。

  3. 事業者でも使える制度ですか。
     個人事業主は要件を満たせば利用できます。個人のみを対象にしているため,法人は使えません。法人の保証人である代表者個人は,法人の債務を整理した後でなければこのガイドラインの利用は出来ないのが原則です。

  4. 債務者の収入や資力によって,ガイドラインを使えない場合もありますか。
     ガイドラインの利用には,新型コロナウィルスの影響によって,債務を弁済することができないこと又は近い将来において残っている債務を弁済することができないことが確実と見込まれること,といったいくつかの要件が定められています。
    例えば,(1)手元に残せる分(2の②)以外の資産が,負債額より大きい場合などは基本的には,利用が困難です。
    また,(2)事業性ローンがなく年収が730万円以上の場合や,(3)既存の住宅ローン年間返済額や住居費の年収に占める割合が40%未満の場合には,個別のケースに応じて判断されることになります。詳しくは,弁護士にご相談ください。

  5. 新型コロナウィルスの問題が起きる前からローンを滞納していたのですが,ガイドラインを使えますか。
     この制度は,新型コロナウィルスの影響でローン返済が難しくなったときに利用できる制度です。したがって,新型コロナウィルスの問題が発生する以前に,ローンについて,期限の利益喪失事由に該当する行為があった場合には,当該ローンの債権者の同意がなければガイドラインの利用はできません。

  6. 銀行にガイドラインを使うと伝えれば,ローン返済がストップになるのですか。
     登録支援専門家の支援を受けて債務整理申出をしたときに一時停止(ストップ)になります。銀行への着手申出だけではローン支払の一時停止にはなりません。ただし,債務整理申出前であっても金融機関が支払猶予に応じてくれる場合もありますので,銀行に相談してみてください。債務整理開始申出の際には,以下の資料が必要となります。個別の事案により必要資料が異なりますので,登録支援専門家にご相談をお願いいたします。
    ①住民票の写し
    ②陳述書及び添付資料(給与明細書・源泉徴収票・課税証明書の写し等)
    ③財産目録及び添付資料(預貯金通帳・証書の写し等)
    ④債権者一覧表
    ⑤家計収支表(直近2カ月)
    ⑥事業収支実績表(直近6カ月、事業者の場合)
    ⑦り災証明書、被災証明書等

  7. 一時停止(債務整理申出)まではローン返済しないといけないのですか。
     債権者が猶予をしてくれなければ,返済を継続する必要があります。返済を継続しないと一括返済を求められたり,担保権を実行されてしまうことがありますから,債務整理の申し出を急いで準備しましょう。もっとも,延滞をしていてもガイドラインが全く利用できないというわけではありません。

  8. 債権者とリスケジュール(返済期間を長期化して1回ずつの返済額を減らす等の返済計画の見直し)をしてしまったり,債権者に一部返済してしまったのですが,ガイドラインは利用できないでしょうか。
     どちらもできます。もし,金融機関が「リスケジュールをしたからガイドラインを利用できない」と言うようでしたら,弁護士にご相談ください。
    但し,一部返済等によりガイドラインの利用に影響がある可能性がありますので,事前に弁護士にご相談ください。

  9. 新たな住宅ローンを借り入れてしまったのですがガイドラインを利用できますか。
     特段の事情がない限り,現在の運用では利用できません。住宅ローン,リフォームローンなど,新たな借り入れは慎重にご検討ください。

  10. 家は残して住み続けたいと考えているのですが,家を残す方法はありますか。
     住宅ローンの返済が残っている場合,たいてい,住宅ローン債権者のために自宅に抵当権が設定されていると思います。この場合,(1)自宅を売却して,その代金で住宅ローン債権者に優先的に弁済する方法だけでなく,(2)不動産鑑定士に自宅の公正価額を評価をしてもらい,その公正価額を住宅ローン債権者に一括弁済または分割弁済することを条件に,家を残す方法もあります。なお,不動産鑑定士の費用も無料になります。

  11. 債務整理が成立に至らなかった場合について。
     ガイドラインによる債務整理を行ったものの,債権者との合意に至らず,ガイドラインによる債務整理を取り下げた場合には,利息なども含めた一括払いが必要になることや,団体信用生命保険の利用が出来なくなるなどの問題が発生することや,法的整理の検討をせざるを得なくなることがあります。

  12. 利用者の準備について。
     ガイドラインによる債務整理については,債権者の経済的負担もあるため,適正な手続きが求められています。必ずしも簡単な手続ではなく,利用者にも準備のご負担もあります。

5. お問い合わせ

 本制度の詳細は、「一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関のホームページ」をご覧ください。 

 また、委嘱依頼後の登録支援専門家の業務遂行について、正当な理由のない業務の遅滞など、不適切な事由が認められる場合、茨城県弁護士会(029-221-3501)までお電話ください。